1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…80分
・解答形式…マーク式・記述式
・配 点…200点
・配点割合…40%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
Ⅰ | 長文(インタビュー)読解総合 | 10 | 0 | 824 |
Ⅱ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 821 |
Ⅲ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 885 |
Ⅳ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 623 |
Ⅴ | 自由英作文 | 1 | 1 | 101 |
計 | 41 | 1 | 3254 |
【2020年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
Ⅰ | 長文(インタビュー)読解総合 | 10 | 0 | 885 |
Ⅱ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 857 |
Ⅲ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 670 |
Ⅳ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 576 |
Ⅴ | 自由英作文 | 1 | 1 | 41 |
計 | 41 | 1 | 3029 |
3.分析
大問類型・大問数・解答数のすべてが前年度(2020年度)と同じで、小問の類型もほぼ変わりませんでした。また最初の4つの大問の各文章もインタービューが1つに他の3つは医系・科学系と例年どおりでしたが、文章の本文語数は前年度比でやや増加しました。文章の内容については、4つの大問とも前年度以上に取り組みやすく、問も素直でした。しかし、最後の自由英作文においては、要求されている語数が依然として半端なく多く、例年どおり最大の関門となりました。
Ⅰ 長文読解総合…「イーロン・マスクの宇宙開発事業」(本文824語・注釈あり)
例年出題されるインタービュー形式の文章です。インタービューはあくまでも会話(対話)形式ですので、まず会話問題と同様にインタービューの状況・背景を確認しておくとよいでしょう。インタービューを受けているイーロン・マスク氏は、設問文にあるとおり宇宙開発事業企業スペースX社の創業者であり、また電気自動車会社テスラ社の経営者としても著名です。稀代の実業家として時代の最先端を突っ走っている人物だけに、その才気、熱気がインタービューからも伝わってきます。そのインタービューの内容ですが、テーマが宇宙開発だけあって一部専門的、にもかかわらず注釈の説明が不十分でややつかみにくいところがあります。
もっとも、大きな話の流れさえつかんでおけば問が素直であるので、さほど苦ではありません。インタービューでは、「質問-応答」の積み重ねにより話題が次々と展開・脱線していきますが、インタビュアーがしっかりしている場合、全体の主題・テーマは評論文と同じく変わりません。その点においては長文読解と同様といえます。つまり、ひとつの主題のもと一本筋が通った中で話が展開していくのですが、しかし本問の場合、問はそこまで広い視野を要求していません。難語の意味も近くの文脈を確認するだけで正答が得られます。他の問の内容もマスク氏の発言の順番どおりに並び、発言ごとにポイントを押さえておけば容易に根拠箇所にたどりつけます。
Ⅱ 長文読解総合…「前頭側頭型認知症」(本文821語・注釈あり)
文章のテーマは「前頭側頭型認知症」。認知症の中でも聞きなれない型ですが、その症例・疫学的特徴・症状・サポートグループによる互助・原因・治療薬の開発についてそれぞれ説明しています。一部専門的な内容を含みますが、注釈があるうえに問が平易であるのでそれほど問題はありません。最後の文挿入の問も、<抽象→具体><核心→説明>という一般的な情報の流れを頭に入れたうえで、空所が配置されている各パラグラフを俯瞰する視野を持てばすぐに正答が得られます。
Ⅲ 長文読解総合…「先延ばし(procrastination)」(本文885語・注釈あり)
文章のテーマは「先延ばし(procrastination)」。procrastinationやprocrastinateは難語(注釈なし)になりますが、第1パラグラフ・第1文でその内容説明があります。また過去にprocrastinationやそれに派生するテーマを扱った入試問題が出題されたことがあるので(大学入試センター試験・2012年度・第6問/東邦大学・医学部・2017年度・第4問)、この単語をすでに知っていた受験生もいたと思います。嫌なことや面倒なことはつい先延ばししてぐずぐずしてしまう、というのは誰にでも経験があることですが、この文章ではその何気ない日常の風景を正面から科学的に論じており、まさに科学の真骨頂といえます。
特に一般的な見方に反してprocrastinationには利点もある、と結論づけている研究が興味深いと思います。ここで注意したいのは、紹介されている調査研究が多い点です。調査研究ごとにその内容(研究者・年代・テーマ・方法・結果・結論)を整理しながら読み進めましょう。文の構造は一部やや複雑で長めなものもありますが、たいしたことはありません。また問についてもさほど苦労はしません。問1の語彙問題は平易。問2は、上述したように調査研究ごとにポイントを押さえておけば根拠箇所も容易に発見できます。問3は、挿入文にあるin
factがここでは逆接であることを見抜けば正答にたどりつけるでしょう。
Ⅳ 長文読解総合…「あごひげの効用」(本文623語・注釈あり)
文章のテーマは「あごひげの効用」。本問においても、普段あまり疑問に思わないあごひげの存在理由について科学的に追究しています。文章の構成は<実験調査型>の典型で、調査研究の「テーマ・概要・要旨」の後に「方法」「結果」「結論」「今後の課題」と続きます。問3・4の挿入文の内容は、「方法」についてのもの。これがわかれば入るべき空所も決まってきます。問2(3)は、少し面倒ですが、視野を波線から文、そしてパラグラフに広げたうえで、記号を当てはめていくとわかりやすくなります。まず波線のあるパラグラフ全体は「結論」に当たり、その結論は「効用がある」だからパラグラフ全体はプラス。次に波線の前方のreducingがマイナスで、波線上のfailureがマイナス。マイナス×マイナス、でプラス。ということはfailureの後はプラスの内容でないと、全体でプラスになりません。プラスの内容の選択肢だけを検討していきましょう。
Ⅴ 自由英作文…「世界を変える力を与えられたら」(本文101語・注釈なし)
書くべき内容を説明する文章の本文語数が、形式を説明する文章と分かれた2018年度以降最多となりました。しかしそれは説明のための具体例を拡充したためで、内容上の条件が明確になり受験生にとってはかえって有益です。自由英作文は自由とはいえ、入試問題である以上「問に答える(what
you write responds to the question)」というミッションが果たされてなければ採点外となります。
問として提示された設問文や文章本文を精査して書くべき形式と内容を条件化していきましょう。まず形式上の条件から確認していきます。第一に、求められている語数です。「解答は所定の範囲内に収め」ること、つまり250~300語となります。「量(quantity)」も評価対象になるので、この語数に何とかして到達しなければなりません。1文を15語で書くとすると、17~20文が必要となります。第二に、文章構成です。「導入(introduction)-本論(main text)-結論(conclusion)」の三部構成のもと「ひとつのessayとして完結(one complete essay)」させます。
パラグラフもこの構成に合わせて3つにするとわかりやすいですが、厚みのある「本論」を2つに分けても大丈夫です。第三に、「topic questionを読んでいない人」にもわかってもらえるように書かなければなりません。「問に答える」の「問」も含めて書くので語数は稼げます。冒頭の「導入」に組み込みましょう。次に内容上の条件です。「人類のために世界を変える力を与えられたとしたら、何を変えるか?またその理由は?」が書くべき「テーマ(topic)」です。仮定法で問われている以上、その直接の答えとなる部分は仮定法で書かなければなりません。「医療(healthcare)に関係するものは除外」という条件も付されています。
また文章中にある具体例と重複する内容も避けるべきでしょう。以上が問から読み取れる形式・内容上の条件です。この条件の枠組みの範囲内で論を展開していきます。論に行き詰まったときは、やはり問の中にある具体例を参考にします。「医師(medical
doctor)」「政治家(politicians)」「芸術家(artists and musicians)」に共通するのは、生命・健康、公共の福祉、美といった人類共通の価値、特に「人類のlife(生命・生活)の向上(make
life better for humanity)」を追求するという点です。
そのような価値の中で、現状を「変化(change)」させる必要がある、つまり現状は価値が実現されていない、あるいはないがしろにされているものを考えていきましょう。「環境」「科学・技術(医学を除く)」「平和」「倫理・哲学」などが思い浮かぶと思います。そこから焦点をさらに絞って、具体的に現状何が問題で(why)、それをどう変えればよいのか(what)、を具体的に書いていきます。人類共通の価値であるといえるか、その価値が現状どう実現できていないのか、なぜ実現できていないのか、どう変えれば私たちのlifeがどのように向上するのか。説得力ある論を展開して「質(quality)」を確保しましょう。注意したいのは、「変化させる力はすでに与えられている」という点です。変化させるまでに至るプロセスは書く必要がありません。
4.対策
試験時間80分で、長文読解総合問題が4つ続き、最後に250~300語の自由英作文、これらを全部解き切るのはかなり厳しいと思います。ライバルと差がつく自由英作文には15~20分を残しておきたい、そのためには最初の4つを60分+αで解かなければなりません。最初の4つは確かに解きやすいのですが、その分かえって落とせないというプレッシャーもかかります。まずはこの試験時間と時間配分に慣れることです。そのうえで無駄な時間をいかに省くか。注釈を見なくて済むほどの語彙力や文章のポイントをつかむパラグラフリーディング、そして確実な解法、事前に準備できるものはすべて準備しておきましょう。
最後の自由英作文においても同様です。essayに必須の定型表現や自由英作文で使える語彙を増やしておきましょう。問われるテーマは医系にかぎりません。幅広い背景知識や柔軟な発想法も必要です。発想が途切れるとペンが止まり、いったんペンが止まると焦り出して首尾一貫した論が展開できなくなります。しかし何よりも苦労するのは要求されている語数の多さです。少しでもペンが止まると時間内で要求語数に達することも難しくなります。迷うことなくその場で語数を増やすテクニック、たとえば同じ内容のものでも形を変えて表現する(具体例・同意表現)、反対意見を紹介してこれに反論する等を磨いていく必要があります。国公立大の過去問等を使って、この時間でこの語数を書き切れるように練習を積み重ねましょう。
1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…140分(数学または国語とともに)
・解答形式…記述式・選択式
・配 点…100点
・配点割合…25%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度】 ★1で出題ミスあり(問7)。
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 文法・語法・熟語・構文(空所語句補充 | 15 | 0 | |
2 | 長文読解総合 | 13 | 2 | 860 |
3 | 長文読解総合 | 9 | 3 | 687 |
計 | 37 | 5 | 1557 |
【2020年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 文法・語法・熟語・構文(空所語句補充 | 15 | 0 | |
2 | 長文読解総合 | 11 | 0 | 823 |
3 | 長文読解総合 | 10 | 1 | 489 |
計 | 36 | 1 | 1312 |
3.分析
前年度(2020年度)に大問数・問題構成がそれまでと大きく変わりました。例年出題されてきた会話問題が消え、発音・アクセントや文法・語法・熟語・イディオムなどそれまで3~4問あった知識系の大問が1つだけになりました。加えて2015年度以降1つだった長文読解総合の大問が2に増えました。そしてこの2021年度においても、それらの変化を踏襲する形となりましたが、長文読解総合問題では、文章の本文語数がさらに増加し、記述式設問数も大幅に増えました。知識だけを問うのではなく、知識があることを前提にその運用能力や論理的思考力を問うという流れがさらに押し進められたといえるでしょう。
試験時間は140分で、数学または2021年度から導入された国語とこの140分間を共有します。英語から解く受験生が多いと思いますが、その場合英語の出来が時間的にも精神的にも少なからず次の科目に影響します。増量された記述式設問を要領よく処理して、配分された時間内に全問最後まで解き切れたか否かが勝敗のポイントだったと思われます。
1 文法・語法・熟語・イディオム・特殊構文×空所語句補充問題
例年出題される類型です。小問数(解答数)は前年度と同じく15。しかし選択肢数が5から4に減りました(ただし前年度Ⅱ期は4)。難易度は平易または標準的で、1問出題ミスがありましたが、それ以外は満点が狙えるレベルでした。
2 長文読解総合…「幸福はなぜ大切か」(本文860語・注釈あり)
文章のテーマは冒頭のタイトルにあるように「幸福はなぜ大切か」。「幸福は大切」という当然の帰結を正面から見つめなおしてその理由を深く掘り下げています。帰結が明白ですし、哲学的な抽象論ではなく、科学的アプローチに基づいていて実証的でもあり読みやすかったと思います。問については、記述式設問が2で残りはすべて選択式。問1は同意語を問う語彙問題で、知識だけで解けるものもあり平易でした。難語・多義語も含んでいますが、その場合でも文脈をたどれば正答は得られます。問2は空所語句補充問題で標準的な難易度。問3の文挿入問題は、挿入文のみならず挿入文をはさむべき前後のパラグラフの最終文と冒頭文にも着目します。そのうえで「接続」の表現や<抽象→具体><核心→説明>という一般的な情報の流れを根拠にして箇所を特定します。問4は和訳問題です。文構造は難しくありませんが、<S
is about A「Sの本質はAだ」>、<the Xest -able A「-できる範囲で最もXなA」>といった表現がやや面倒です。確実に押さえて訳出に落とし込みましょう。問5は内容説明問題(記述式設問)ですが、下線部中のTheの指示部分をさがす指示語問題でもあります。下線部中のfindingsの内容にふさわしい部分を、直前の文の中から過不足なく特定します。その部分の正確な訳出を前提に、設問に提示された条件を満たすよう答を作っていきましょう。
3 長文読解総合…「思考と鬱」(本文697語・注釈あり)
文章のテーマは冒頭にあるように「思考と鬱」。思考型(the fixed mindsetとthe growth mindset)によって鬱の対し方が異なることを調査研究によって明らかにしています。the
fixed mindsetとthe growth mindsetという対立軸を意識してパラグラフを分類・整理していくとよいでしょう。問については、記述式設問が3、残りはすべて選択式でした。問1は同意表現を問う問題で平易です。Althoughは従位接続詞であるのでここでは不可となります。
問2は空所語句補充問題。<文法・語法>アプローチだけで解けるものもありますが、そうでないものは文脈を丁寧にたどりましょう。問3は空所語補充問題。解答の根拠となる箇所は空所からかなり離れていますが、上述の対立軸で考えると視野が広がり見つけやすくなります。空所はthe growth mindset側にある以上は根拠箇所も同じthe growth mindset側のパラグラフにあるはずだ、と考えてさがしていきましょう。
問4~6は記述式設問でした。問4は、内容説明問題。「問に答える」という大原則から、設問をよく読んで条件を確認していきます。根拠とすべきパラグラフが指定されていますが、制限字数が「30字以内」であるので必要不可欠な部分を正確に特定していかなければなりません。「固定思考の人たちにとって~どういうことを意味するのでしょうか」から考えて、この人たちの思考型によって出された結論を拾っていきます。「思考」を表すidea(特にその後のmeant)やthoughtの直後の各that節の内容をまとめていきましょう。問5は和訳問題です。「譲歩」のas、無生物主語×rob
A of B、多義語resourceなど短い文ですが論点は盛りだくさんです。ひとつも落としてはいけません。
問6はまた内容説明問題。やはり設問をよく読みます。指定されたパラグラフの第1文に着目すると、そのWhen節が「成長思考を持っている人たちにとって」に対応していると解せるのに対し、主節が「失敗とはどのようなものなのか」に対応する部分になっています。したがって、この主節の内容を採用します。しかし、それだけでは設問の条件の「80字以内=最低でも72字を目標」に届きません。そこで次の第2文を見ると、こちらもif節が「成長思考」に対応しているので、その主節は「失敗とはどのようなものなのか」に対応していると解せます。この2つの主節の内容をまとめれば制限字数の条件を満たせます。
4.対策
試験時間140分を数学または国語と共有しますが、英語はそのうち最長で60分を配分するのがよいと思います。また英語の方が解きやすいので、英語から始めるのが得策です。しかしその英語で失敗すると次の科目に確実に影響するので、配分された時間内で各問を確実に最後まで解き切る演習を重ねておく必要があります。
その中でも2021年度から増量された記述式設問の出来が勝敗のカギとなります。普段マーク式設問に慣れている受験生は記述式設問には手も足も出なくてともすれば問ごと飛ばしてしまいがちですが、記述式設問は一般に配点が高いため、白紙だとかなりの失点となります。部分点狙いでもいいので白紙は絶対に避けて最後まで解き切らなければなりません。
まずは記述式設問の類型ごとの解法を習得し、そのうえで時間内に書き切る練習を積みましょう。特に「問に答える」の大原則から、設問の条件を満たすように加工し記述する練習が重要です。解答の根拠部分はわかっても、条件を満たしていなければ点はもらえません。2021年度は制限字数が30、70、80でしたが、それ以外の字数にも対応できるよう字数の伸縮幅を持たせて練習を積んでいきましょう。また和訳問題は当然としてその他の記述式設問においても、根拠部分の和訳ができることが前提となっています。解釈(和訳)技術の向上も不可欠です。文構造を見抜く訓練とともに、訳の抜けがないよう語彙力や表現力を拡充しておきましょう。
1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…60分
・解答形式…マーク式・記述式
・配 点…100点
・配点割合…25%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | アクセント | 5 | 0 | |
2 | 文法・語法・熟語・構文(空所語補充) | 5 | 0 | |
3 | 文法・語法・熟語・構文(整序英作文) | 5 | 0 | |
4 | 長文読解総合 | 25 | 0 | 851 |
5 | 長文読解総合 | 7 | 1 | 1003 |
計 | 47 | 1 | 1854 |
【2020年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | アクセント | 5 | 0 | |
2 | 文法・語法・熟語・構文(空所語補充) | 5 | 0 | |
3 | 文法・語法・熟語・構文(整序英作文) | 5 | 0 | |
4 | 長文読解総合 | 25 | 0 | 797 |
5 | 長文読解総合 | 9 | 3 | 913 |
計 | 49 | 3 | 1710 |
3.分析
問題構成・大問数・問の類型のすべてが前年度(2020年度)と同じでした。前年度から初めて導入された記述式設問も同じく第5問で出題されましたが、前年度は解答数が3(文章の要点を3つ/日本語で各20字以内)であったの対して、2021年度は解答数が1(日本語で50字以内)でした。
この第5問ですが、長めの文章に加え、内容一致問題(マーク式設問)の選択肢がきわめて多い点が特徴です。文章の本文語数は、2015~2018年度は700~900語の間でしたが、2020年度は913語、そして2021年度は1,000語を超えました。他方で選択肢数については、2016年度に32だったものがその後減少して2021年度は20に落ち着いています。それでも全選択肢の単語総数は519語と選択肢だけで長文並みの長さです。
またマーク式設問では、これまで正答の数だけ解答番号が割り振られていましたが、この2021年度から解答番号が1つだけになりました。つまり6つとも正解でなければ得点が与えられない(完全正答)ように変更された可能性があります。このように大容量の第5問ですが、直前の第4問も分量が多く、2017年度以降文章の本文語数が増加し700~900語の間で推移しています。また本文語数の増加に応じて解答数も大幅に増加、他の大問を圧倒しており、全体の中の比重が最も大きくなっています。最後の第5問を焦らずに最後まで解き切るために、この第4問をいかにスムーズに乗り切るかが2021年度もカギとなりました。
これら第4・5問に対して第1~3問は例年どおり比重が小さく、難易度も標準的でした。
第1問 アクセント
発音・アクセントは、長年大問の形で出題されています。年度単位で発音とアクセントが交互に出題された時期もありましたが、2017年度以降はアクセント問題(他と異なるものを選ぶ仲間外れ形式)が続き、2021年度も同じでした。選択肢が5つあるので未知の単語に出会ってしまいがちですが、それでも仲間外れを問うだけなので正答は得られます。難易度は標準的です。
第2問 文法・語法・熟語・イディオム・特殊構文×空所語補充問題
例年出題される類型です。選択肢は5つです。平易または標準的な文法・語法・熟語・イディオム・特殊構文が問われています。一部選択肢に難語が出ていますが、消去法または積極法によって正答にたどりつくことができます。
第3問 文法・語法・熟語・イディオム・特殊構文×整序英作文問題
この第3問も例年出題される類型です。問われる空所は2箇所です。日本文がなく、英文は1文だけで文脈もないため、日本文を推測しながら解く必要があります。また複数の知識が組み合わされている問もありますが、ひとつひとつの知識はみな標準的です。
第4問 長文読解総合…「コロナ禍で苦労する聴覚障碍者」(本文851語・注釈あり)
文章のテーマは「コロナ禍で苦労する聴覚障碍者」。2015年度以降、この第4問と次の第5問はともに日本の英字新聞の記事が出典となっており、日本が舞台の時事的な内容で比較的読みやすかったと思います。問Aは、例年出題される空所句補充問題。前年度と同様、すべて主語(S)だけ残してV以降が空所となっており、そのため選択肢はすべてVから始まっています。Vは時制・態・一致(三単現のS等)により語形変化するため、まず<文法・語法>アプローチで絞り込みましょう。そのうえで<文脈・意味>アプローチでは、時制に関わる「時」の表現や、butやsoなどの「接続」の表現に着目していけば正答は得られます。
前年度よりは取り組みやすかったと思います。問Bは単語・熟語の同意表現を問う問題で、平易または標準的でした。問C、Dはいずれも空所語補充問題。Cは、文脈を丁寧に拾っていきましょう。Dでは慣用表現中の前置詞が問われていますが、難易度としては標準的です。
第5問 長文読解総合…「テキストメッセージを用いた診療」(本文1,003語・注釈あり)
文章のテーマは「テキストメッセージを用いた診療」。直の対面を必要としない遠隔医療としては、ビデオ通話によるオンライン診療やネット回線による遠隔操作手術などがありますが、本問で紹介されているのは、医師と患者の間で診療に必要な情報を、もっぱらテキストメッセージを用いてやりとりする手法です。これまで以上に便利さ、手軽さを実現できる反面、従来の医療からすると危険な面もあり、その点も文章で紹介されています。
この文章の出典は一般読者向けの新聞記事であるため、専門性を排除した事実の紹介に終始し、内容上の深みはなく、文の構造も難しくはありません。問については、前年度に引き続きマーク式設問(問A)と記述式設問(問B)の2つ。問Aは、例年出題される多数選択肢を伴う内容一致問題です。解答数は2017年度以降6で固定されていますが、選択肢数は前年度から2つ減って20でした。
しかし全選択肢の単語総数は前年度の456語から519語に増加し、個々の選択肢は長くなりました。選択肢が長いと細かい部分の見落としがないようにとより神経をつかいます。加えて一見簡単そうでも落とし穴や盲点が隠されていたりと、時間がない中で20の選択肢を敵にして厳しい判断だったと思います。次の問Bは部分要約問題でした。設問にある「Dr.
Anna Nguyen」は複数のパラグラフに登場し、彼女についての様々な具体的事実が書かれていますが、「日本語で」「50文字(句読点を含む)以内」という形式上の条件に収めるためにその内容をかなり絞り込まなければなりません。
「問に答える」という大原則から、設問の「医師としてどのような働き方をしているか」という観点で必要な情報を抽出していくと、結局文章全体のテーマであるmessage-based treatmentに帰着します。それがわかれば書くべき内容に迷うことはなかったと思います。
4.対策
試験時間が60分で記述式設問を含む解答数が50近くもあり、時間的にかなり厳しい試験となっています。そのためまず第1~3問は、時間をかけずに(10分+α)かつ正答率を高くしなければなりません。発音・アクセントや文法・語法・熟語・イディオム・特殊構文の各知識を完全習得したうえで、反応よく速く正確に解けるよう実戦演習をこなしていきましょう。最初の3つで時間的・精神的な余裕を得たら、次に第4問と第5問です。
特に第4問をいかにスムーズに解き切るかが勝敗のポイントです。例年出題される問Aの空所句補充問題は解答数も多く、ここでつまずくと第4問のみならず第5問にも影響を及ぼすおそれがあります。速く正確に解けるよう解法を習得し、類題で練習を積み重ねましょう。そして最後の第5問です。まず問Aの内容一致問題ですが、選択肢は、可否の根拠箇所が本文の順番どおりになるよう並べられています。
したがって、1~2パラグラフを読んですぐに選択肢を2~3個解く、ということを前から順番に繰り返していけば、根拠箇所が発見しやすく無駄な時間や手間が省けます。長い文章もぶつ切りにして狭い視野で細部まで目を光らせて解いていくわけです。次に問Bの記述式設問ですが、類型は要約・要旨問題です。そのため問Aとは反対に広い視野で文章全体を骨太にとらえていかなければなりません。しかしそうはいっても、さすがに第5問は時間的・精神的に圧迫されています。本文を読む前に問Bの設問を読み込んで、「問に答える」ために必要な情報を理解してから読み始めるとよいでしょう。
さらに記述の練習も必須です。長い文章の要旨・要点を数十字の制限字数内に手早くまとめるには演習を繰り返すしかありません。マーク式設問が続いた後、最後にとってつけたような記述式設問ですが、時間が足りないからといって白紙で出すと致命傷になりかねません。必ず最後まで書き切れるようにしておきましょう。
1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…60分
・解答形式…記述式・選択式
・配点…100点
・配点割合…25%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
Ⅰ | 長文読解総合 | 13 | 1 | 559 |
Ⅱ | 長文読解総合 | 10 | 0 | 499 |
Ⅲ | 長文読解総合 | 12 | 0 | 457 |
計 | 35 | 1 | 1515 |
【2020年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
Ⅰ | 長文読解総合 | 11 | 1 | 481 |
Ⅱ | 長文読解総合 | 12 | 4 | 672 |
Ⅲ | 長文読解総合 | 12 | 1 | 458 |
計 | 35 | 6 | 1611 |
3.分析
大問数・解答数ともに前年度(2020年度)と変わらず、文章の本文語数の総数もほぼ同じでしたが、自由英作文の導入は大きな変更点となりました。英作文は、2019年度までは和文英訳、2020年度は本文の内容に沿って答える英問英答型であり、2021年度の自由英作文は2000年代初頭以来の出題です。全体的に文章・問ともに前年度よりは取り組みやすかったと思われます。
解答の根拠がしっかりとしており(一部例外あり)、実力さえあれば正答は得られますが[実力に応じた結果となりますが]、Ⅰの自由英作文に加えて、Ⅱの空所語句補充問題で意外に時間がとられるため、試験時間60分の中での時間配分が重要となってきます。
Ⅰ. 長文読解総合…「天然痘の撲滅の歴史」(本文559語・注釈なし)
文章のテーマは「天然痘の撲滅の歴史」。第2パラグラフで疾病としての天然痘の説明がなされていますが、文章全体のメインテーマはその撲滅の歴史です。医系長文だけあって本文や選択肢には医系単語が散在しますが、注釈はひとつもありません。その分、医系単語の知識および牛痘接種法(天然痘ワクチン)についての史実を知っているとかなり有利となります(聖マリアンナ医科大・2018年度・第2問参照)。
文章の内容はあくまでも事実の説明であり、医系単語さえわかれば平易といえます。問も、選択型では一部紛らわしいものがあるものの全体的として標準的です。最後の自由英作文は、本文の内容をもとにその倫理性を論じさせる問題です。現代の倫理基準からすればジェンナーのtestingは一種の人体実験となり許されません。「被験者の同意」がなく、またたとえあったとしても被験者が8歳では同意能力を欠きそもそも同意は無効となるからです。
しかし、問がwasとなってる点に着目しましょう。当時の状況に身を置き、当時の諸事情を勘案してその時代における倫理性を判断すると解すれば、ジェンナーのtestingは許されるという結論も可能であると思われます。その場合、特に「目的」の適正さ、当時最も恐ろしい感染症であった天然痘を予防するという医学的意義の大きさ、そして「手段」の相当性、いったん牛痘に罹患するとその後天然痘には罹患しないということがすでに知られていた等、本文で述べられている当時の事情を挙げて丁寧に論じるとよいでしょう。
Ⅱ. 長文読解総合…「自然光の医学的効用」(本文499語・注釈なし)
文章のテーマは「自然光の医学的効用」。文章全体の内容はつかみやすいですが、1文1文は長めで、文構造も比較的複雑です。問は空所語句補充問題のみです。この設問類型では、<文法・語法>と<文脈・意味>の2つのアプローチから選択肢を絞っていくのが常道です。本問では、<文法・語法>だけで1つの選択肢に絞ることができる問もあり、まずはこのアプローチで複雑な文構造を解きほぐし選択肢を絞り切ることが大切です。
さらに<文脈・意味>アプローチで正確に展開を追っていけば正答にたどりつけますが、本問では本文のみならず選択肢にも難語が登場し(注釈はなし)、解答の妨げとなっています。
Ⅲ. 長文読解総合…「ニアミスは学習に役立つ」(本文457語・注釈なし)
文章のテーマは医系ではありませんが、その構成は<実験調査型>の典型です。調査研究の「テーマ・概要・要旨」の後に「方法」「結果」「結論」「今後の課題」と続いています。問は、自由英作文を除いてⅠと同じ設問類型の構成となっています。最初の「概要・要旨」を押さえておけば、文章の内容は読みやすいでしょう。問も、一部紛らわしい選択肢があるものの全体的に平易といえます。
4.対策
医系単語を含めて通常の受験レベルを超える語彙力が必要です。文脈から類推するにしても時間と手間が惜しく、できるかぎり事前に準備しておきたいところです。標準的な問は、受験生のレベルの高さを考えるとひとつも落とせません。ちょっとしたミスが命取りとなりますので、基礎レベルの知識や技術は完全に習得、そのうえで実戦演習をこなして知識や技術を洗練する必要があります。
英作文はその設問類型が近年変化していますが、今後どの類型が出題されても対応できるように対策をとっておくべきです。特に自由英作文は出来不出来の差が激しくその分合否に直結しますので、処理手順・発想法も含めて十分な準備をしておきましょう。
1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…90分
・解答形式…記述式・選択式・マーク式
・配 点…300点
・配点割合…30%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度(前期)】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 長文読解総合 | 25 | 9 | 1823 |
2 | 発音・アクセント・語彙 | 15 | 0 | |
3 | 自由英作文 | 1 | 1 | |
計 | 41 | 10 | 1823 |
【2020年度(前期)】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 長文読解総合 | 9 | 7 | 836 |
2 | 自由英作文 | 1 | 1 | |
3 | 長文読解総合 | 11 | 8 | 304 |
4 | 発音・アクセント・語彙 | 16 | 0 | |
5 | 長文読解総合 | 13 | 0 | 771 |
計 | 50 | 16 | 1911 |
3.分析
長文読解総合問題数が、前年度(2020年度・前期)の3から2021年度は1のみとなりました。合わせて全体の大問数も5から3に減り、小問数・解答数も減りました。しかし、唯一の長文読解総合問題である[Ⅰ]が超長文のため文章の本文語数の総数はさほど変わらず、設問類型の点からも前年度の[Ⅰ]・[Ⅲ]・[Ⅴ]が2021年度は
[Ⅰ]に統合された形となっています。さらに[Ⅰ]は[Ⅲ]の自由英作文問題とも連動しているため、結局[Ⅰ]の出来で勝負が決まりました。
[Ⅰ] 長文読解総合…「臓器提供の意思表示方式」(本文1,823語・注釈なし)
本文語数が1,800語を超え、かつてない超長文の出題となりました。分量は多いのですが、文章がA~Fの6つのPartに分かれており、パラフラフ(paragraph)と文章(passage)の間にPartという単位をはさむことで文章全体の構造がつかみやすくなっています。文章のテーマ(主題・主張)は、臓器提供の意思表示に係る4つの方式の特徴・相違について、です。個人の意思や自由を尊重しつつもいかに臓器提供件数を増やすか、その問題意識のもと各方式の特徴(メリット・デメリット)と相違の説明がなされています。デフォルト・ルールを軸にしたexplicit
consentとpresumed consentの対比が特に重くなっています。本文を丁寧に読んで内容を骨太に整理していけば、問はさほど難しくはありません。
[Ⅱ] 発音・アクセント・語彙
単語の発音・アクセント、単語の意味が問われていますが、いずれも標準的であり、そのためひとつも落とせません。
[Ⅲ] 自由英作文
前年度と同様、[Ⅰ]の文章の内容と連動しています。臓器提供の意思表示方式が適用できる他の場面を挙げ、その場面にふさわしい方式が問われています。[Ⅰ]の文章の内容を丁寧に読みとりポイントを骨太につかまなければ、場面も論点もなかなか思いつかないと思います。個人の意思(承諾)が問題になる医療上の場面としてインフォームド・コンセント(通常の治療行為・臨床試験)がありますが、明示的意思表示が得られない[得にくい]場面でなければ4つの意思表示方式の適用場面となりません。そのような場面としては、専断的治療行為・安楽死・尊厳死があります。
しかしそこでは、患者個人の意思以外に、医療者の治療義務の限界、そして違法と適法の境界線など複雑な要素が絡み合うため、それらすべての論点を1~2パラグラフに中に収めるのは容易ではありません。大切なのは、[Ⅰ]の内容に沿った骨太の問題意識「個人の意思と公益(法益)とのバランス」のもと、当該場面に最もふさわしい意思表示方式を導き出すことです。そしてその論拠としては、臓器提供との相違(死後か生前か)、安楽死を書くならば積極的安楽死か消極的安楽死か、尊厳死との相違(苦痛の有無・死期が切迫しているか否か)等も踏まえたうえで展開し、結論に説得力を持たさなくてはなりません。
4.対策
知識(単語・熟語・イディオム・文法・語法・特殊構文)、技術(解釈・精読・長文読解・英作文)ともに高いレベルが要求されています。単語ひとつとっても、難語でも注釈がつかず、また発音・アクセントまで問われます。毎年出題される空所語補充問題(動詞の語形変化型)においても、解くには単語(意味)・文法語法(語形)・読解(文脈把握)のすべての力が必要です。
まさにスキのない総合力が問われています。文章のテーマは例年医系に限りませんが、[Ⅰ]のようにいざ医系が出題されると、小論文で問われるような医療系の知識・論点を事前に知っておくだけでかなり有利となります。医学単語も習得しておいた方がよいでしょう。
また自由英作文では、要求されている条件をすべて確認して「自由」の幅をあらかじめ狭めておくことが大切です。形式上の条件としては、in one or
two paragraphsとあることから最低でも100語は必要です。さらにacademic styleという条件からは作文や感想文とは異なる文章構成が求められています。そのうえで書くべき内容上の条件を[Ⅰ]の文章からあぶり出し、その条件に見合うよう柔軟な発想で肉付けをしていかなければなりません。
大問は3題ですが、この質・量で90分となると時間的余裕はそれほどありません。書くための手順をしっかりと準備・練習して、無駄な手間や時間をできるだけ省く必要があります。
1.試験時間・解答形式・配点
・試験時間…75分
・解答形式…マーク式
・配点…100点
・配点割合…25%(対全科目)
2.問題構成
【2021年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 670 |
2 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 879 |
3 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 846 |
4 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 873 |
計 | 40 | 0 | 3268 |
【2020年度】
大問 | 大問類型 | 解答総数 | 記述式解答数 | 文章の本文語数 |
1 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 597 |
2 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 731 |
3 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 721 |
4 | 長文読解総合 | 10 | 0 | 683 |
計 | 40 | 0 | 2732 |
3.分析
大問数・解答数ともに前年度(2020年度)と同数でしたが、文章の本文語数の総数が前年度比で536語増と大幅に増加となりました。これは、問題構成が現在のものになった2017年度以降最多となります。また注釈は2018年度以降日本語表記でしたが、2021年度からは英語表記に戻りました。さらに第1問では、文章の内容に関連するグラフが初めて登場し、グラフの数値を読みとる問が出題されました。このように2021年度は文章とその周辺において変化・変更が目立ちましたが、問の類型については2017年度以降のものとほぼ変わらず、問の内容も根拠が明確であり標準的といえるものが大半でした。
PASSAGE 1 長文読解総合…「ピーナッツアレルギー」(本文670語・注釈あり)
文章のテーマは「ピーナッツアレルギー」。子どものピーナッツアレルギーについて、その増加傾向、原因、治療法を薄く広く紹介・説明しています。事実を並べているだけで特段内容に深みはありません。また文の構造も平明で読みやすいです。問についても、設問で指定されているセクションが短く根拠部分を容易に見つけることができます。セクション単位で読みながらその都度対応する問を解いていきますが、最後にタイトル問題があるので、文章全体を意識することも怠らないようにしましょう。
PASSAGE 2 長文読解総合…「コロナ時代の母の死」(本文879語・注釈あり)
母親の死をめぐる一連の出来事についてのエッセイです。病や死は若く健康な受験生にとってはただでさえ縁遠いものですが、この文章では、母親の急死に重病の父親とコロナ禍が重なり、さらにそれらを外側からユダヤ教の薄膜が包み込むという構図になっていて、すんなりとは入り込みにくいと思います。ただ、肉親の死に対するショックと悲しみは実体験がなくとも共感はできるものであり、その点から複雑な構図に切り込んでシンプルにとらえることができれば、問が素直である分対応はできます。まずは5W1Hに則って具体的な状況を整理し、筆者の心情を丁寧にとらえていきましょう。
PASSAGE 3 長文読解総合…「十代の若者の睡眠不足」(本文846語・注釈あり)
文章のテーマは「十代の若者の睡眠不足」。若者の睡眠不足の現状とその原因、メンタルヘルスとの関係、行動への影響、睡眠のタイミングと質、改善方法についてそれぞれセクションに分けて論じてます。他の大問の文章に比べてセクションは長めですが、最初のセクションを除いてそれぞれにタイトルが付されているのでセクションごとのテーマ・概略がつかみやすくなっています。文の構造も複雑ではなく、問も平易、特に最後の要約問題は「睡眠不足」の有無だけで正答が得られます。
PASSAGE 4 長文読解総合…「キメラを使った臓器移植の倫理的問題」 (本文873語・注釈あり)
臓器提供数の不足を補う医療新技術の倫理上の問題が文章のテーマです。医療は人の生死に関わるため医療の先端技術には必ず生命倫理の問題がつきまといます。生命倫理は小論文でも扱うテーマであり、「キメラ(chimera)」や「ゲノム編集(gene
editing)」といった用語はすでに知っている受験生も多数いたと思います。
しかしこの文章では、人だけでなくドナー動物であるブタ側に立った「動物福祉(animal welfare)」の問題も展開していて論はそれほど単純ではありません(日本大学・医学部・2020年度A方式・PASSAGE
4参照)。その内容に応じて1文1文も長く、文構造もやや複雑となっています。背景知識があまりない受験生は特に読むのに苦労したと思います。問についてはそれ自体素直で根拠箇所もわかりやすいのですが、その根拠部分がきちんと読めていないと当然のことながら正答にはたどりつけません。
4.対策
文章については分量が多く内容や文構造がやや複雑でとらえにくいものがある一方で、問については素直で比較的取り組みやすい、という試験となっています。このように文章が重く問が軽い場合には、「解くために読む」と割り切った方が得策です。
重い文章もポイントだけを骨太にとらえて、問に関係のない枝葉部分は流していきましょう。また75分という試験時間は私立医学部では他になく、60分より長いということで余裕をもって読んでいると、90分よりは短いのでてこずると思いのほか時間がなくなります。実戦演習を重ねてまずこの75分に体を慣らしていって、時間感覚を体得していきましょう。
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